生涯学習研究事業

NHK生涯学習コンテンツ配信研究事業を手がけるにあたって
〜生涯学習社会実験を通した「生涯学習」と「人材育成」の役割を研究〜
1.「生涯学習」と「人材育成」
 平成2年6月、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(平成二年六月二十九日法律第七十一号)」いわゆる生涯学習振興法が施行されました。国民が生涯にわたって学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、生涯学習の振興のための施策の推進体制及び地域における生涯学習に係る機会の整備を図り、もって生涯学習の振興に寄与することを目的とするという趣旨の法律です。
 生涯の大半を「人材育成」に費やしてきた経験から、「生涯学習」は大変重要な分野だと認識しております。「人材育成」が提供する側の立場に立った見方とすれば、「生涯学習」は受け取る側の視点で捉えるべきものと考えます。また、「人材育成」が企業、「生涯学習」が地域社会における取り組みともいえます。
2.「生涯学習」を取り巻く環境
 社会の変化、特に公共事業を取り巻く環境が変化し、他の先進国と同じく、我が国は個を大事にする自由な社会、小さな政府を指向しております。そして、大切なのは個人が自立し、「自己責任」をしっかり果たすことです。我々も住民の立場に立てば、自己による責任が求められる環境に接しています。従来は行政による自治に守られ、ある程度の責任を回避できましたが、画一的な行政サービスでは多様化する個性をすべて満足させることは困難となりつつあります。生涯学習に対する思いはやはり人それぞれであり、興味の対象もとても幅広いものとなっており、従来の公共事業では幾分その効果が低下してきていることは否めません。しかし、生涯学習をきちんと提供する使命が行政にはあります。
3.生涯学習社会実験−「NHK生涯学習コンテンツ配信研究事業」
 生涯学習を取り巻く現実として、生涯学習に興味を持っていても、「暇がない」、「近くにちょうどいいカルチャー・スクールや機会がない」ということで断念されるケースが多々あります。時間と空間に関する制約ということですので、それは一般には抗うことができないものと考えられております。我々は、常識にとらわれずにそこをブレークスルーしたいと新しいソリューションを考えました。それが今回の「NHK生涯学習コンテンツ配信研究事業」です。
 本事業では、インターネットとNHKが所有する豊富な優良コンテンツ・ライブラリーを活用することで、手軽に利用できる生涯学習手段となっております。もちろん、我々の得意とする民活手法PFI方式を導入し、利用者や行政予算などの負担を限りなく軽減しております。様々な生涯学習がある中で、今まで環境による制約があるため限られた機会を活かせなかった方々に対する「きっかけ」として、その一部分の役割を担うことができれば大変幸いなことです。
4.生涯学習は社会の中の「意義」と「権利」
 生涯学習のレベルが上がれば暮らしの豊かさも上がります。そして、その地域コミュニティの豊かさも上がります。自己責任とは、「個人主義」のことではなく、集団の中において自身を磨き・高め、「役割責任」を果たすことだと考えます。そして、個人が自身を啓発し、意識・スキル・人間性等を高めることで良好なコミュニティが形成できるようになるのです。みなさまがより広く・深い知識を身に付けることで、地域コミュニティや社会全体に大きなプラスとなります。そこに、生きていることの意義が発生してくることに繋がります。それぞれの方はより高い生涯学習を受ける権利があります。
 今後、特定の地域で生涯学習社会実験として経験を重ね、将来はさらによりよいソリューションとしたいと考えておりますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
平成18年11月
特定非営利活動法人 日本ソフトインフラ研究センター
理 事 長  田 中 弘 昭