大規模災害が東京を直撃した場合、国は被災全貌を把握し都県への支援と全国での官民挙げての支援の調整にあたり、都県や市区町村等の自治体はそれぞれの地域の被害状況の把握、救出救助や消火活動など、被害拡大を防ぐ減災活動に追われることになる。高齢者などの災害時要援護者への支援も地域に依頼するなど、行政の災害対応には極めて限りがある。地域の被災者にも3日間できれば1週間は自助で頑張ってほしいと言っているのであり、元気な若者が多い都心に溢れる帰宅困難者への対応には手が回らないのが実情である。 |
誰が帰宅困難者になるのかは、本人が一番分かっているはずである。とくに都心・副都心区部で被災した外出者は、そこに留まることが一番安全な対応である。地震の直後に250件もの火災が環状7号線の内外の木造密集市街地で発生し、都心部はそうした火災に取り囲まれるのである。少なくとも、これらの火災が収まるまでは、道路は緊急車両以外は使うことはできないし、都心部からの徒歩での帰宅も避けるべきである。 |
火災が収まるまで、職場や学校がある人はそこを活用して一晩過ごすべきであるが、買い物客など身を寄せる場所を持たない被災者に対して、一時滞留場所を行政・民間が協力して提供しようと、準備を進めているところである。しかしながら、行政からの支援には限界がある。場所を準備されているとしても、そこでは、滞留者が「自立自助」の観点から自ら対応するとともに、さらに若者が高齢者など援護が必要な帰宅困難者を支援して一晩過ごすという「市民共助」が不可欠であろう。 |
すなわち、発災直後の帰宅困難への対応は原則的に自立自助の課題なのであり、個人の防災意識の向上と、一人ひとりが帰宅困難時のための個別対策を考え、個人として防災グッズの準備等を具体的に開始することが重要である。さらに、就業者や顧客に対する企業責任の課題である。就業者が市民同士として地域で助け合えるような準備を企業としても進めておくべきである。 |
都心部での帰宅困難者が徒歩帰宅を始めるのは、火災等の対応活動が落ち着いてからなので、早くても翌日以降である。その時、帰宅途上で休憩したり情報提供などの支援の場として、『災害時帰宅支援ステーション』の考え方がある。でも、そこで支援する人は誰なのでしょうか。地域が大きく被災していれば、支援する余裕もないことも想定しておかねばならない。 |
とくに大都市では、誰もが帰宅困難になる可能性を持っている。その時、誰がだれを支援して、人々は徒歩帰宅するのでしょうか。市民の共助の場としての『災害時帰宅支援ステーション』構築は可能なのか。企業はどのように就業者や顧客の帰宅問題を支援すべきなのでしょうか。企業の役割は多い。 |