避難誘導街区案内板における広告の取り組み



 屋外サインに協賛広告表示枠を付設した自律型民活公共事業である避難誘導街区案内板整備事業は、地域の自主防災力向上を目的として、原則事業期間20年、PFIにおけるBOT方式(Build Operate Transfer、民間主導により、民間側が公共施設等を建設、維持管理・運営し、事業期間終了後官側へ移転する、利用者・受益者から利用料を収受してコストを回収するタイプ)の事業手法を用います。

特徴は、協賛広告表示部を案内板に付設し、自治体の財政事情等を理解して社会に貢献しようとする企業・個人から出捐される協賛広告料を事業の原資の一部として組み入れ、案内板の整備費用及び維持管理・メンテナンス費用等に充当することです。

最近では、自治体からの要請により、広報掲示板のタイプにおいても同様の取り組みを行っております。


 本来の利用者・受益者である地域住民や外来者は特定が難しいため、本事業では協賛広告表示部へ広告を掲出してくれる広告主を利用者と位置付けて、広告主となってくださる企業の皆様とコミュニケーションを図り、ご理解をいただけるよう募集活動を行っております。

案内板に広告を掲出していただける企業の皆様が存在することで初めて事業が成り立つスキームであるため、そのご協賛に満足し、企業価値の向上の一助となるための方策を最も優先して考えております。


 広告効果は、リーチ(媒体/広告に接触した人の割合)、フリークエンシー(リーチした人々が媒体/広告に接触した平均の回数)、GRP(Gross Rating Point、総延べ到達率(視聴率))などにより表されます。

広告主が広告掲載に求めることといえば「予算の効率的活用(Optimization)」ですが、従来は「広告費を抑えること(Cost Saving)」を中心に効率を追求することが多かったのですが、本来の目的に従って「PR効果の成果を挙げること(Value Up)」によって効果が追求されるようになるべきではないかと考えるようになりました。

理由は、生活者を取り巻く環境変化により、メディアの種類も増加、情報の種類・量も増加、結果として全部の情報を受け取ることができないため、生活者の中で情報の取捨選択が厳しくなり、広告バリアーが激しくなったということです。

さらに、メッセージがメディアを通じてターゲットに到達するだけではなく、メッセージの浸透が重要な要素となってきていると認識しております。


 そこで広告の浸透のしやすさという「質」が重要となり、主に、@「メディア接触態度の質(例えば、その媒体だけを凝視している場合と他のことをしながら、とでは広告浸透可能性に差が生じる。(視聴質))」、A「ブランドとメディアの相性の質(ライフスタイルにより興味・価値観が違うため、同質な価値観を持つ人が集まるメディアはその情報群と相性がいい。(心理距離))」、B「メディア接触タイミングの質(顧客の生活行動に沿ったブランドに関与の高いタイミングを狙うことでメッセージの浸透度が高まる。(コンタクトポイント))」の3つのアプローチがテーマとなります。

面白い事例として、スポーツ用具メーカーの米国ナイキ社が、バスケットボールのリングとボードに見立てた公園のゴミ箱を広告として配置したところ、商品コンセプトや社会的役割のPRについて革新的なイメージで大きな反響があったとのことです。


 あえて言えば、「CSRでは飯は食えない。しかし、CSR無くしても飯は食えない。」という環境が先にできあがってきています。

非常に残念ながら、多少のことなら不正もやむなし、利益のためなら目をつぶろう、という考えが過去一部に散見されたことも事実ですが、そうした風潮はいずれ風化するものと考えております。


 企業・コミュニティも人で成り立っているものです。

従業員のモチベージョン・広告主の満足感・自治体による公共サービスのVMF向上(高効率)・地域住民や観光者などの来訪者にも便利、広い視野で考えれば自ずと答えは見えてきます。

コマーシャル的側面から導入して成果を得ることにももちろん繋がりますが、何より重要なのは、ビジネスモデルに関わるステークホルダーの心理的充足・安心感に繋がるということです。

競争や強迫観念に急き立てられながら、地域社会貢献を社会に対する義務として強制されるのではなく、ごく自然に溶け込むように(ある意味無意識に)、周囲と調和できる環境で社会貢献活動を実行できることは心地よいもので、何気なくふとした瞬間に使命を果たしたときの達成感のような無類の喜びや安定感を味わうことができるものと考えております。

これは非常に大きな(不可分な)要素で、私どもが最も強調したいことです。


 「すべてのステークボルダーが精神面でも充足するスキームを創造したい」、ステークホルダーとそのような価値観を共有できたとすれば、そのコミュニティは間違いなく他のコミュニティより居心地がいいと感じることができるはずです。

そこは、強く、そして、やさしい地域なのです。

ぜひご理解とご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。