事業の経済効果

事業の経済効果から本事業を見た場合

迷惑駐輪・放置自転車問題は非常に根が深いため、これら問題について「自治体における経済効果・損失(ロス)」を切り口に検証します。

まず、最も直面している課題は対策に対する予算支出です。自転車が放置されている状態をそのまま野放しにしているわけにもいかないため、近年は「自転車放置対策指導員の配置」、「放置自転車撤去業務」に積極的に取り組む事例が多くあります。この費用は、主に人件費等の管理コストであり、経費です。つまり、自転車を整理整頓する・移動させるという行為に資金が使われることとなり、(雇用効果をここでは置いておくとして)後に残らない支出と言えます。当面の課題である「目の前に溢れる自転車群を減らす」ことが求められているため現状避けて通ることができないのですが、単に「空間を移動」させるためのコストであり、限りある予算ですので、本来であれば後世に形として残る社会資本整備に費やしたいところです。

次に、公営の自転車駐車場を整備するという社会資本整備に予算を使うことができる環境にあるとします。前述の管理コストではなく、投資として形があり、後に残るものですので、優先して取り組みたい施策です。ところが、迷惑駐輪や放置自転車が問題となるような所は、繁華街であり、多くの人が集まる所、余分な土地がない所と言えます。新たに自転車駐車場を整備するための用地確保も非常に困難となります。例えば、自治体が運良く用地を確保できたとしても、その用地を自転車駐車場の他にも使いたいという様々な要望が上がるはずで、自転車駐車場のために確保できるとは限りません。

駅前や繁華街では自転車駐車場を整備する用地を確保できないため、土地も安く、空間があり密集していない、少し離れた場所に自転車駐車場を設置すると、その不便さから自転車利用者があまり利用してくれないということになります。イニシャルコストは低く抑えることができたとしてもチャンスロスが発生し、ROAなどの指標が低下します。

地域コミュニティに対する経済損失も多大となっています。円滑な通行が妨げられる自動車、自転車、歩行者の時間・機会損失が挙げられます。このロスは直接的な損失だけではなく、心理面に悪影響を及ぼす間接的損失の原因ともなります。

続いて、買い物時の利便性低下による当該地域の商店からの客離れも大きな損失となります。これは、客数の低下とともに、客単価の低下も招きますので、影響は甚大です。大型店では付置義務駐輪場が確保されますが、自店とその周辺のことは対策することができたとしても、当該地域へ流入する自転車全体へ影響を及ぼすことはできず、行政側の手腕に依存することとなります。

また、人命や財産を危険に晒すことになるという深刻なものもあります。これは、「犯罪の温床となる危険」、「モラルの低下」、「災害・事故等の不測の事態の円滑な避難・救助が妨げられる懸念」という危険性を常に含有するというものです。例えば、「駅で火災が発生し、多くの利用者が一斉に駅から逃げ出したら、目の前が放置されている自転車等で塞がれ、さらに後ろから人の波や危険が押し寄せてきたら」と考えると、犠牲者も覚悟しなければならない由々しき事態ということがわかります。

さらに、景観に害を及ぼすことによる観光・居住者離れ等の損失やイメージダウンも無視できない数値となります。
そして行き着いた先が、独自の行政判断で、「やむを得ず」公道上に駐輪スペースを用意することです。既に至るところで実施されていると見受けられますが、どんな事情があるにせよ法の網をかいくぐって開き直ったと言われても反論できないことであり、これはコンプライアンスと言えず自治体側がモラルハザードを起こしてしまったことを意味し、地域住民へ法の遵守を徹底させる訴求力・説得力の低下、行政の信頼を揺らがせる事態の誘因、イメージダウンを引き起こし、その他の施策にも影響を与えるほどのロスを発生させてしまいます。これが民間企業であれば、上場廃止基準に抵触するくらい重い違反であり、経営の根幹・企業の存続が揺らぐほどの表面化していない負債や爆弾を抱えていることと同じことになります。

さらに、迷惑駐輪・放置自転車問題を放置しておくことは自治体として求められる課題解決力・調整力の欠如という評価に至るため、経営力の指標に悪影響が及ぶことになります。当然のことながら、取り組みを行っていない・行ったというレベルの評価ではなく、その対策の中身・質(バリュー・フォー・マネー)、速やかな実行が為されているか(タイムリーさ)ということに着目されます。

本事業では、 以下の成果を得られることが特徴であり、自治体側に多くのインセンティブが発生します。
@「道路法施行令を改正する政令」という新たな政令を踏まえたコンプライアンスの事業であること
A受益者負担の原則に徹する事業であること
B民活事業であるため予算の節約と財源が確保されバリュー・フォー・マネーの優れた事業であること
C短・中期の対策として早期に取り組むことができタイムリーであること
D地域コミュニティの犠牲の上に成り立つのではなく活力を引き出す事業であること
E景観が美しくなること
F自治体の都市計画に合致すること

街の活気はそのままに、地域コミュニティに優しく、温かく包み込むような、施策となります。行政側の努力・思いは地域全体に伝わり、必ず好意的なリアクションが返ってくると確信しています。地域コミュニティ、自転車利用者は、自治体にとって信頼できるステークホルダーであるからです。